2020年06月06日

都市計画の中断が生んだ細長い公園

岡山市北区大和町にある公園「北方遊園地」は、妙に細長い。2本の道路に挟まれているとも言えるし、道路の真ん中にあるとも言える。マップを見ると分かるように、この道は線路につきあたって行き止まりになっている。クルマが頻繁に行き来するわけではないので、真ん中に公園をつくっても問題ないと判断したのだろう。



細長〜い敷地が3つ並んでいる。

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さらにマップを見ていると気づくことがある。この公園を含む道幅は、交差点の東側に続く道幅と同じだ。東西に太い一本のラインが見える。

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コピーライトマーク OpenStreetMap contributors

実はこの東西の道路は、主要幹線道路になるはずだった。線路を越すつもりだったので、まずはその手前まで用地取得・整備されたのだ。また、東側では旭川に橋を架ける予定だった。この計画がなくなり、かわりにつくられたのが現在の岡北大橋である(県道96号を結ぶ)。

この道路整備・延長は戦前から計画されていた。その名残が昭和15年(1940年)に建造された栄橋(岡山市北区中井町)だ。北方遊園地から東へ数百メートルの位置にある。

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新時代の技術だった鉄筋コンクリートでこのような凝った意匠の橋がつくられたことに、この道への期待が伺える。

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コピーライトマーク OpenStreetMap contributors

戦後もこの道の整備は続けられた。下の空中写真は1975年のもの。まだ北方遊園地はできておらず、交差点から西に「行き止まりの妙に広い道」がぽっかりと存在していることが分かる。

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国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より

線路の向こう側に道が接続される気配がまったく見られないところが切ない。栄橋方面から続く道が、ここでプツンと途切れている。

具体的にいつごろ計画中止(とルート変更)が決定されたのかは調べてないが、中止決定後、ある日、誰かが発案したのだろう。「ここに公園つくれるんじゃない?」と。

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国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より

こちらは1980年の空中写真。公園かどうかまでは分からないが、道路に島ができている。北方遊園地はこの頃に誕生したのだろう。戦前に構想された都市計画が、長い年月を経て、結果的に細長い公園を生み出したのであった。


※本稿をまとめるにあたって『おかやま街歩きノオト』著者の福田忍さんに貴重な助言をいただきました。感謝いたします。



posted by pictist at 20:27| 都市鑑賞

2020年05月30日

『100均フリーダム』の思い出(2)

2010年10月には深川東京モダン館というところで「100均フリーダム展」を開催、また期間中にトークイベントをおこないました。

同館は昭和7年(1932年)に東京市営の食堂としてつくられた建物で、国登録有形文化財になっています。そんな場所と100均グッズとのギャップも面白かった。

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曲がる階段とタイルにグッときました。

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ウェルカム星。

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書籍に収録した100均グッズの実物を展示。未収録グッズも多数、並べました。

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100均界のアイドル「フーリー」が勢揃い。

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展示準備は完全に先方にお任せしてたので、最初は「アクリルカバー、べつになくてもいいんだけどな」って思ってたんですが、見てるうちにだんだん「これはこれで面白いかも」と思い始めました。厳重なのが逆に。

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今もこれらのグッズは自宅にあるんですけど、どうすればいいですかね……

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↑この机の上にあるのは、トークイベント当日にお客さんが持ってきてくれたもの。この頃から100均でフリーダムグッズを探すことを「フリーダミング」と呼ぶようになりました(翌年には「全国一斉100均フリーダミング」というSNSイベントも開催)。

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トークでは書籍未収録グッズの紹介を中心に、100均CDの音楽を聴いたり、ゲーム画面を紹介したりしました。

たくさんの方がお越しくださったのですが、中でもうれしかったのは能町みね子さんが来てくれたこと。それまでSNSでの交流はあったのですが、お会いしたのはこのときが初めて。当時、能町さんはまだメディアに顔出しをしていなかったので、自己紹介いただくまで当然こちらは分からず、うれしいサプライズでした。

あと前回書き忘れてましたが、2016年には高橋源一郎さんがラジオで『100均フリーダム』を紹介してくださいました。NHKラジオ第1「すっぴん!」内の「源ちゃんのゲンダイ国語」というコーナーです。これはかなりうれしかった。

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こちらは刊行時の著者インタビューです。なぜか「ビジネス+IT」というサイトにて。
https://www.sbbit.jp/article/cont1/21956

というわけで『100均フリーダム』10周年の振り返りでした。
5月31日までKindle版が30%OFFです。この機会にぜひ。

いつも心にフリーダムを。



posted by pictist at 23:11| あれこれ

『100均フリーダム』の思い出(1)

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今から10年前、2010年に『100均フリーダム』という本を出版しました。100円ショップで買い集めた不思議な商品を「作品」として鑑賞し、ひたすら褒め称えた本です。

当時の感想ツイートをこちらにまとめてるのでざっと見てみてください。これを読めば、未読の方が「今からでも買おう」と思ってくれるに違いない。

書籍『100均フリーダム』の感想ツイート(1)

書籍『100均フリーダム』の感想ツイート(2)

↓少し立ち読みもどうぞ。

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当時「書店の立ち読みで済まそうとしたけど笑いをこらえることができず、本を閉じてレジに持っていった」という感想を見たときはうれしかったなあ。

今読んでも面白いんですが、一つだけ残念なのは、本書に載っているような「フリーダムな」商品は、もうほとんど100均には売っていないということ。この10年で100均はずいぶん洗練されてしまいました。

当時は、この本を読み終えて100均に行けば、実際にフリーダム商品に会うことができた。本と現実が地続きになっていた。そこがいま読む人と当時読んだ人との決定的な差になってしまっていると思います。

『100均フリーダム』はけっこう話題になって、メディアにもたくさん取り上げてもらいました。

NHKの書評番組「週刊ブックレビュー」で取り上げられたり、

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壇蜜さんが紹介してくださったり。

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各書店での展開も、書店員さんたちの熱が伝わってくるようでうれしかったです。

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第2回「ブクログ大賞」エッセイ部門で入賞したりもしました。

2020年5月31日までKindle版が30%OFFになっているそうなので、この機会にぜひ。

いつも心にフリーダムを。




posted by pictist at 05:47| あれこれ

2020年05月29日

川に並ぶT字(旭川ケレップ水制群)

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岡山市を流れる旭川の東岸にT字型の石積みが並んでいる。桜橋から旭川大橋の間に計19基。これは上流から流れてきた土砂が溜まって水深が浅くなるのを防ぐために建造されたものだ。旭川は重要な舟運路だった。

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明治期にはすでに計画されていたが、着工したのは昭和に入ってからで、昭和8年(1933年)〜昭和14年(1939年)につくられた。鉄道輸送が発達した昭和初期においても、当地では海と連絡する河川舟運が重視されていたことが分かる。

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このあたりは淡水と海水が混ざる汽水域で、ケレップ水制周辺の干潟にはヤマトシジミが生息している。初夏には潮干狩りに訪れる人もいるそうだ。



ちなみに「ケレップ」は「水制」を意味するオランダ語なので、ケレップ水制は「水制水制」。ゴビ砂漠やチゲ鍋の仲間である。




posted by pictist at 23:06| 都市鑑賞

2020年05月24日

『散歩の達人』で対談しました

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片手袋研究家の石井公二さんにお声がけいただきまして、『散歩の達人』2020年6月号で対談をしました。いただいたお題が「今の路上観察シーンから赤瀬川原平を振り返る」というものだったんですが、どちらかというと「いまの路上観察シーン」のほうに重点を置いた話ができたかな、と思っています。

石井さんとは以前からお話がしたかったので(石井さんは大学の卒論テーマが赤瀬川原平という筋金入り)、良い機会をもらえました。Zoomで2時間くらい話したんだけど、楽しくてあっというまでした。石井さん、またぜひおしゃべりしましょう。

6月号の特集は「ご近所さんぽを楽しもう」。「文字」「電線」「野草」「旧町名」「暗渠」などさまざまなジャンルの都市鑑賞者たちが登場していて、読みごたえがありますよ。『ほじくりストリートビュー』を連載している能町さんもコラム「バーチャル散歩講座」で参加。

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この対談ではピクトさんの話は特にしなかったんですが、ページが非常口カラーになっててうれしかったです。


【追記】ウェブにもアップされました。
都市鑑賞者と片手袋研究家が語る、路上観察の今昔〜赤瀬川原平を振り返る〜





タグ:都市鑑賞
posted by pictist at 00:49| 執筆

2020年04月29日

大山顕『新写真論』は「写真論」ではない

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書影はゲンロンショップより

大山顕の新著『新写真論 スマホと顔』を読んだ。「ゲンロンβ」連載時にも飛び飛びに読んでいたのだが、とにかく興奮性シナプスが発火しまくる(←誤用)内容で、「おー!」とか「ふおー!」とか何度も呻きながら一気に読了した。

大山さんとはずいぶん長いつきあいになるのだが、本書が面白すぎるので同い年である自分との落差を感じて少し落ち込みつつも、同時に「友達がこんなにすごい本を書いたよ!」とみんなに自慢したい気持ちでいっぱいだ。

僕は昔から「『見る』とはどういうことなのか/世界を知覚するとはどういうことなのか」を考えるのが好きな人間で、都市鑑賞活動をしているのもそうした動機がベースにある。『新写真論』はそんな僕の好奇心にガチハマリする内容で、グビグビ読まされた。

ひとまず目次を見てください。ここに並んでいるワードを眺めるだけでも、読みたくなる人がいるのではないだろうか。いてほしい。

【スマホと顔】
01 スクリーンショットとパノラマ写真
02 自撮りの写真論
03 幽霊化するカメラ
04 写真はなぜ小さいのか
05 証明/写真
06 自撮りを遺影に
07 妖精の写真と影

【スクリーンショットと撮影者】
08 航空写真と風景
09 あらゆる写真は自撮りだった
10 写真の現実味について
11 カメラを見ながら写真を撮る
12 撮影行為を溶かすSNS
13 御真影はスキャンだった

【写真は誰のものか】
14 家族写真のゆくえ
15 「見る」から「処理」へ
16 写真を変えた猫
17 ドローン兵器とSNS
18 Googleがあなたの思い出を決める
19 写真から「隔たり」がなくなり、人はネットワーク機器になる
20 写真は誰のものか
21 2017年10月1日、ラスベガスにて
22 香港スキャニング
23 香港のデモ・顔の欲望とリスク

著者は本書のまえがきでこう書いている。

現在、写真は激変のまっただ中にある。写真というものが「地滑り」を起こしていると言っていい。「写真」という用語をあらためなければいけないとすら思っている。言うまでもなくこれはスマートフォンとSNSによってもたらされた。
(中略)
SNSとスマートフォンがセットになったときこそがほんとうの革命だった。その象徴が自撮りだ。従来の写真論の根幹のひとつである、撮るものと撮られるものとの間の対立をうやむやにしてしまった。

スマホとSNS以降に生きる私たちが撮ったり見たりしている「写真」は、もはや従来の「写真」とは違ってきており、別の名前が必要かもしれない「何か」になりつつあるのだ、と指摘している。では、どう呼べばいいのだろうか。

思いつきで言うが、それは「新写真」だろう。すなわち、本書『新写真論』は新「写真論」ではなく、「新写真」論なのだ。

ここは強調しておきたいところだ。書名だけを見て「(いわゆる)写真とかってべつに興味ないな」と思った人がいたとしたら、「ちょっと待って」と呼び止めたい。そういうんじゃないんです、と。

この本には「私たちの話」が書かれている。私たちというのは、日常的にスマホを使って、暮らしの中でなにげなく写真を撮って、それをシェアしたりしなかったりしている、世界中の私たちだ。AIや顔認証システムやドライブレコーダーやGPSやGoogleと共に生きていかなくてはならない、世界中の私たちだ。

これらのテクノロジーの普及が、人類史(都市、美術、コミュニケーション、知覚の歴史)の中でどういう意味を持つのかを、本書は考察している。

著者はこうも書いている。

これは写真だけの話ではないとぼくは思う。あらゆる領域で同じようなことが起こっている。

本書はたまたま日本に住む人間によって書かれたが、世界のどこの国の人間が書いてもおかしくなかった。

人類は、と言うと大げさに聞こえるかもしれないが、ほんとうに大げさでなく人類は今後、写真について語ろうとするとき、『新写真論』の内容を避けて通れないだろう。本書は、世界中でほぼ同時に起こっている新しい現象について考察しているからだ。

今、スマートフォンとSNSを無視して文明を語ることはほとんど不可能に近い。それと同じ意味で、今後『新写真論』を無視して写真を語るのはかなり難しいと思う。

……なんか興奮して大仰に書いてしまったので難しそうな本だと思われると困るのだけど、この本、分かりやすい文章でサクサク読めます。あと頭から順番に読まなくても大丈夫。エッセイ集みたいなものなので、気になったタイトルの章から読んでみて。

おでかけできない2020年のゴールデンウィーク、ぜひ『新写真論』で興奮性シナプスを発火(←誤用)させて巣ごもりを楽しんでください。Kindle版も出てるよ。

『新写真論』
大山顕
320ページ
株式会社ゲンロン
ISBN-10:4907188358
ISBN-13:978-4907188351
発売日:2020年3月24日
2640円




タグ:都市鑑賞
posted by pictist at 04:05| レビュー

2020年04月22日

円形歩道橋

十日市交差点歩道橋(岡山市北区十日市西町、2011年竣工)

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こちらは上から見たところ。歩道橋も円形だが、交差点のまわりの土地も円形になっている。




下は1961年(昭和36年)の同地点。この頃からすでに円形だ。

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国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より

この十日市交差点を含め、岡山市街には円形に用地取得された交差点がいくつかある。おそらく戦後にラウンドアバウトをつくろうとしたのだと思うが、その計画は頓挫し、いずれも直交路となっている。

だから円形歩道橋とこの土地が円形であることは関係ないのだが、関係ないと知りつつも、昔の空中写真を見ると、まるで数十年前から予言されていたような気がして面白い。




タグ:都市鑑賞
posted by pictist at 06:24| 都市鑑賞