2024年08月08日

さよなら緩速濾過池(三野浄水場)

三野浄水場(岡山市)の緩速濾過池(かんそくろかち)が2024年5月に停止されました。このうち1号・3号濾過池は浄水場の創設時(1903年〜1905年)に築造されたもので、なんと約120年間にわたって稼働してきました。これは現存するものでは国内最古級で、登録有形文化財にもなっています。

特にニュースにもなっていないようですが、岡山の重要な近代化遺産の一つなので、市民としてはねぎらいの言葉をかけてあげたいです。

明治時代にコレラが大流行し、岡山でも多くの死者が出ました。これをきっかけとして、岡山市は全国で8番目という早い時期に、巨額の予算をかけて上水道を敷設しました。近代水道の目的の一つが感染症対策だったという事実に、今あらためて重みを感じます。

去年、施設を見学させていただいたときに撮った写真を以下に紹介します。
※すべてクリック(タップ)で拡大できます。

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1号緩速濾過池

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バルブ室の建屋は増設時(1926年〜)に設けられたもの。改修はされていると思いますが、当時の面影を残しています。

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手前が1号濾過池、その奥が3号濾過池(2号は現存しません)

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縁石に万成石が使われているのも鑑賞ポイント。

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万成石は明治以降に本格的な採掘が始まった、いわば「近代の石」。岡山の近代化遺産を鑑賞するときは、この石の存在も気にしてみてください。

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現在、緩速濾過池の水はすでに抜かれて空っぽになっています。もうこのように水を張った状態では見られないのかもしれません。

岡山市水道局に聞いてみたところ、1号・3号緩速濾過池は今後「モニュメント化を含めた最適な保存方法を検討していく予定」とのことです。



三野浄水場については以前こんな記事を書いたんですが、

三野浄水場の無名建築がかっこいい
http://pictist.sblo.jp/article/186287843.html

残念ながらここで紹介したガチクールな建築「総合取水ポンプ室」は、ファサード面が削り取られ、正面に別の設備が建てられたため、もうかつての姿を見ることはできなくなっています。

ただ、建物そのものは残っているので、昨年の見学時に屋上に登らせてもらいました。

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屋上の塔屋。かっこいい〜

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屋上から見た西川用水の取水樋門。樋門から右方向へ流れているのが西川用水で、左から来て下方向へ流れているのが座主川用水です。2つの水路の間の仕切りが外されるときもあります。

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北東を向いたところ。奥に三野取水塔(1956年/昭和31竣工竣工)が見えます。旭川の伏流水(地下水)を取水しています。

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南東を向いたところ。西川用水は、この下流で旭川合同用水(管掛用水)と合流します。

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浄水場内の古そうな鉄蓋。

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岡山市水道局の局章入りドアハンドル。

ちなみに、岡山市の上水道開業時につくられた施設としては、半田山配水地が現役で稼働しています。また、京橋水管橋も同じく現役です。

【参考文献】
岡山市水道誌(岡山市水道局、1965年)

【あわせて読みたい】
・半田山配水地
・三野浄水場の無名建築がかっこいい
現存最古「京橋水管橋」
・瑜伽山加圧ポンプ場と門田喞筒場

posted by pictist at 18:53| 都市鑑賞