2023年05月06日

ギャラリー「サンホセ」と機関庫の要石

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おかやま路上観察学会の河原馨さんが運営していたギャラリー「サンホセ」(岡山市北区駅元町)が閉店しました。とても残念ですが、1969年の創業から50年以上にわたって営業を続けてこられたというのは、個人経営のお店としてすごいことだと思います。長いあいだおつかれさまでした。

サンホセは、おかやま路上観察学会の発表展示の場でもありました。私が初めてサンホセを訪れたのは2010年頃だったと思います。年2回の展示をいつも楽しみにしていました。河原さんから聞く赤瀬川さんや藤森さんとの交流のお話も楽しかったです。また、河原さんには2016年に開催したトークイベント「路上観察レジェンドday」にもご登壇いただきました。

サンホセの閉店に伴って、敷地内にあった植え込みも取り除かれています。この植え込みの植栽枡には、ついこの前まで花崗岩がポツンと置かれていました。これです。

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これは旧中国鉄道岡山機関庫(1899年/明治32年竣工)のアーチ部に使われていた要石(キーストーン)なのです。機関庫が解体される際にもらったのだそう。うっすら桜色というかオレンジがかった色をしているのが分かるでしょうか。岡山産の万成石です。

河原さんが1983年(昭和58年)に刊行した『裏美考』という本には、解体される前の機関庫の写真が載っています。私はこれ以外に機関庫のカラー写真を見たことがないです(書籍に載っているのはモノクロ写真ばかり)。要石の現物も貴重だけど、この写真も貴重だと思います。

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中鉄バス『中鐵九十年の歩み』(1991年)に掲載されている機関庫の全景。現在、カラオケグレートパンプキンや、ポレスターガーデンシティ清心のあるあたりだと思います。

要石は河原さんが引っ越し先に持っていったそうなので、これまでのように町なかで鑑賞することはできなくなりそうです。

岡山市の中心部に住んでいると、そこらじゅうで万成石を見かけます。そのへんの花壇に置かれていてもべつだん珍しくはないのですが、来歴を知ると、これも貴重な近代化遺産の一つ(欠片だけど)だということが分かります。

万成石は明治時代に入ってから採掘が始まった石なので、まさに「近代の石」だと言えます。岡山市民にとってはありふれたこの石を、いま一度「近代化を支えた石」という視点で見つめ直すと面白いのではないかと思っています。





posted by pictist at 21:04| 都市鑑賞