
露出Y型と呼ばれるタイプです。

露出Y型そのものはまだ多く現存してるんですが、この送水口が「村上製作所」製の「差込式」であるという点で珍しいのです。

村上製を示すMマーク。
送水口のホース接続口には「ねじ式」と「差込式」の2種類があるのですが、村上製作所製のオールド送水口は「ねじ式」が多く、「差込式」は出荷数が少ないのです。だから現存数も少ない。
送水口のホース接続口は、かつて東京都内は「ねじ式」、それ以外の地域は「差込式」と定められていました。村上製作所は東京のメーカーなので、「ねじ式」の出荷数のほうが多かったわけです。
そしてときどきはこうして地方へ販売することもあり、当然その場合は「差込式」を出荷していたということですね。
「ねじ式」は下のようなタイプ。接続口の横に突起が出ているのが分かるでしょうか。この突起があるのがねじ式。

冒頭の山陽ビルの送水口をもう一度見てみてください。突起がありませんよね。
今回の記事を書くにあたって、村上製作所の村上善一社長より製品の歴史について詳しくご示教いただきました。ありがとうございました。
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余談ですが、山陽ビルにはもう一つ、珍しい設備が残っています。ダストシュートのように上の階から投函できるシュート式ポストです。

これは2階の廊下にある投函口。さらに上(3階以上)からもつながってるのが分かりますね。

ここから投函すると、

1階に到達。

集荷は2008年に廃止されています。
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余談をもう一つ。タイトルに山陽ビル(表町アルバビル旧館)と表記していますが、カッコの中の「表町アルバビル旧館」というのは旧称ではなく、現在も使われている名前です。つまりこのビルには二つの名前があるのです。
1階と2階が「山陽ビル」、3階から上が表町アルバビル旧館となります。1・2階と3階以上とでオーナーが異なるので、呼び名も違うのだそうです(隣りに表町アルバビル新館ができたので「旧館」になっています)。
もともとは全体が「山陽ビル」だったのだと思います。昔の写真を見るとそう称しているので。

『岡山の建築 1950-64』(岡山県建築士会、1964年)より
11号ビルというのは「中之町11号ビル」という意味。当時、表町商店街につくられた数々の不燃化ビルのうちの一つです。
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