
前回の続きです。
上之町ビルは、シンプルな構造をしているわりには全貌がつかみにくい。初めて中に入ったときは、移動しながら「あれ?」と思う瞬間が何度かあった。
この建物の分かりにくさの最大の要因は、「3階の通路が西側にあり、4階の通路が東側にある」ことだろう。これを知らないまま中を移動していると、不思議な感覚におちいる(これを読んで知ってしまった方はもうこの感覚を味わえないが)。

こちらは3階の通路。写真は南を向いた状態で、向かって右側が商店街だ。防火建築帯らしさあふれる一本道。

窓から外を見るとアーケードの屋根がある。

竣工時のこの写真に写っている窓が、上のアーケード側の窓だ。

こちらは4階の通路で、北を向いている状態。向かって右がオランダ通りだ。

実は外から分かる箇所がある。写真はオランダ通りから見た様子だが、3階の東進予備校は窓のすぐ奧に教室があり、4階の窓の向こうは通路になっているのが見える。よく見ないと気づかないだろう。
ここまで3階と4階の話をしてきたが、では2階はどうなっているのかというと、2階に通路はない。上之町ビルは、「1階の商店と、それぞれのお店の上の階」がセットになっており、商店ごとに分かれているのだ。「2階建て店舗の上にテナント階がある」と思えば分かりやすい。

だからエレベーターが2階に停まらない。「2」のない階数表示。
以下は建物の中を見ながら気になったもの。

まだピクトさんがいない頃の非常口サイン。1980年代以前は、このように文字だけだったのだ。

トイレサインもピクトグラムはなく文字だけ。

階段。

木の手すり。

そして上之町ビルのいちばんかわいいところ、階数表示。これは最上階のR

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1がただの棒に見えるところもいい。