
助手席から見えた高架橋脚の群れがかっこよかったので、「お」と声を出した。運転者が「停めましょうか?」と聞いてくれた。僕の好奇心をよく分かってくれている。
取材仕事の帰り道だった。インターチェンジから降りてすぐ。町からけっこう離れている。僕はクルマを運転しないので、自分ひとりで来ることはまずない場所だ。そしてこの道をふたたび通る可能性は低い。
高架橋脚は、ため池から突きだしていた。風はなく、水面がピンと張っている。暗闇の中でカメラを握った。頭上をひっきりなしにクルマが通っているのに、なぜか、とても静かだった。