2018年08月01日

ありふれた街並みが愛おしくなる「金沢民景」

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「金沢民景」というリトルプレスが素敵すぎるのでご紹介します。これは石川県金沢市の風景を収集し、「1ジャンル1冊」でまとめているシリーズ本。現在、第10号まで発行されています。

金沢民景
https://kanazawaminkei.tumblr.com


第1号/門柱
第2号/バーティカル屋根
第3号/私有橋
第4号/たぬき
第5号/バルコニー
第6号/石臼
第7号/アプローチ階段
第8号/キャノピー
第9号/腰壁
第10号/小屋根

各号のタイトルが、取り上げている対象物です。 これらに共通しているのは「住民がつくり出した風景(の要素)」であるということ。風光明媚な景色でもなく、由緒ある建物でもなく、観光名所でもない。人々の生活の中から立ち現れてくる風景を「民景」と名付け、写真とともに紹介しているのが、この「金沢民景」シリーズです。

まず表紙がかわいい。手のひらに収まるA6サイズという大きさもかわいい。1ジャンル1冊という発行形態もユニーク。1冊100円。ありそうでなかったですよね。コレクション欲が刺激されます。

(この体裁、金沢民景さんに聞いてみて分かったのですが、なんと岡山在住の私の知人が間接的に影響を与えていたのです。その話はまたのちほど)

金沢民景の最大の特徴は、住人に話を聞いているところ。これ意外と少ないのです。都市鑑賞にはいろんなスタイルがあって、どのやり方にもそれぞれ面白みはありますが、ヒアリングを通して「なぜそういう状態になっているのか」を解き明かしていくスタイルには、やはりその手法ならではの面白さがあります。

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例えば第1号「門柱」に掲載されているこちらの物件。ケヤキの丸太でできた門柱です。住人の方に聞いたところ、もともとは足元まですべて丸太だったけど、蟻害でボロボロになったので補修して現在の姿になったのだそう。礎石に見えるように左官屋さんに補修してもらったとのこと。最初からこの姿だったわけではないんですね。これは聞いてみないと分からない。

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こちらは第10号の「小屋根」で紹介されている物件。ベージュ色の曲面壁の上にトタンの壁と屋根が付け足されています。なんとなく不思議な様相ですが、普段、歩いていてこれを見てもそのまま通り過ぎてしまいそうです。

これも住人の方に取材したところ、このベージュの曲面壁は、もともと汲み取り式便所の汲み取り口を隠すための壁だったのだそうです。それが水洗式に変わって汲み取り口が不要になり、この空間を物置として使うことにしたと。そこでトタンを付け足したということなのでした。

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こちらは第3号の「私有橋」。なんてかわいいエメラルドグリーン! これも取材により、住人の方が自分で塗ったものであること、この色がお気に入りでペンキを常備していることなどが明らかになっています。さらに、30年ほど前まではこの用水路に橋はなかったことも判明(その理由はぜひ本誌でお確かめください)。

掲載されているすべての物件について取材エピソードが書かれているわけではありませんが、このような地道なヒアリング活動が、金沢民景プロジェクトの魅力になっていることは間違いないと思います。

金沢民景のウェブサイトには、本誌に掲載している物件とは別に、住民の方へのインタビュー記事が掲載されています。こちらも読み応えがあるのでぜひ。 

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この回とかめちゃ面白い。
インタビュー #05 「石が大量に埋め込まれている門柱」
https://kanazawaminkei.tumblr.com/post/173038029614/

金沢民景さんは都市の表面だけを見るのではなく、都市と人とのかかわりも見つめようとしているように感じられます。その背景にはどのような思いがあるのでしょうか。金沢民景さんを紹介するからには、やはり私も民景流に「取材」をしなければと思い、代表の山本さんに電話でお話を伺いました。

長くなったので続きは次回に。

「金沢民景」シリーズ、岡山では奉還町の雑貨店「チロップ」さんで扱っています。他にも都市鑑賞系の雑貨や書籍を扱っている素敵なショップ。テトぐるみなどの「マニアパレル」グッズもありますよ。

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『金沢民景』
各1冊あたり
価格:100円(税込)
判型:A6・両面カラー
頁数:16頁
製本:中綴じミシン製本


続き

部分の集積によって街をつかむ「金沢民景」
http://pictist.sblo.jp/article/184070688.html?1533187046

タグ:都市鑑賞
posted by pictist at 19:26| レビュー