2024年04月28日

「パルメット」コレクション

シュロの鑑賞を始めて10数年経つんですが、調べているうちに「パルメット」という文様にも興味を持つようになりました。これは古代エジプトに起源を持つ文様で、世界中に伝播しています。

ときどき「シュロの葉をかたどったもの」と説明されることがありますが、これは正確ではなく、もともとはヤシ(ナツメヤシ)の「樹形」から生まれたものと考えられています。

奈良文化財研究所のこちらのブログが面白いです。
なぶんけんブログ|文様のはるかな旅路

ここが特に面白い。
《パルメットは西アジアから東へ波及するなかで、文様のみがもたらされ、それぞれの地で身近な植物と結びつきながら図案化されていったのでしょう。古代の日本でも、パルメットの祖型が何なのか、人々は知らなかったと思われます》
《西アジアで生まれたパルメットは、はるばる日本までやってきて、さらに独自の変化を遂げました》

「樹形」の意匠だったものが「葉」の意匠として解釈されたことが、もっとも大きな変化だったのだろうと思います。

先日つくった「シュロランド」のロゴにもパルメット文様を使っています。このパルメットは素材を購入したもの。右のシュロランドの文字は、岡山の文字作家カンザキさんにお願いしてつくってもらったものです。

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『パルム書房のヤシ総合誌 シュロ3』(2024年)所収「俳句 ようこそシュロランド」より

これも広義のシュロ景と捉えたい。 日本ではよく洋風建築の意匠や、和洋折衷建築の鬼瓦などに使われています。これまでに撮影したパルメットを以下に掲載します。

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こちらはパルメットとシュロの貴重なツーショット。

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福寿会館(旧 安倍和助別邸/広島県福山市)で見ることができます。

西洋のパルメットと日本のパルメットでは、上下が逆になっていることが多い。「樹形」と捉えているか、垂れ下がる「葉」と捉えているかの違いなのだろうと思います。

posted by pictist at 16:03| 都市鑑賞

岡山の半鐘杭

以前、『それは本当に「火の見櫓」か』という記事を書いた。警鐘台の中には、水防を主目的としてつくられたものもあるのではないか、という内容だ。

警鐘台にはいろんな様式があるが、梯子型の木製警鐘台のことを、岡山では半鐘杭(はんしょうぐい)と呼ぶ。岡山弁で訛って「はんしょうぎぃ」あるいは「はんしょうぐえ」と言う。この半鐘杭を鑑賞していると、周囲の状況から、水防も意識してつくられているのではないかと思われるものがけっこうある。

まずは前回の記事で紹介した半鐘杭3点をもう一度見てみよう。いずれもすぐそばに水路や河川がある。

【日畑の半鐘杭】

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【九蟠の半鐘杭】

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【西大寺の半鐘杭】

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以下は今回、新たに撮影したもの(すべて岡山市内)。

【円山の半鐘杭】

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路面に分かりやすくコンクリート敷きの暗渠が見える。暗渠になった時期は調べてないが、水路沿いに立てられていることが分かる。天井川になっているところがいかにもスリリングだ。

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もちろん火災報知も半鐘杭の重要な役割。柱に消防信号表が貼ってあった。

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珍しい三本脚型。富山学区連合町内会によると建造は昭和30年代とのこと。

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【広谷の半鐘杭】

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こちらは一目瞭然で、間違いなく水路を意識したものだろう。下記Googleマップも見てほしい。

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街灯も兼ねている。




【光津の半鐘杭】

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ここもすぐそばに水路があるが、それだけではなく、近くにある百間川(旭川放水路)にも意識が向いているのではないかと想像する。

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半鐘杭に貼られたプレートには、ここが海抜0メートル以下の土地であることが記されている。もちろん後から貼られたものだが、結果的にこの半鐘杭と水防を結びつけるような見え方になっている。

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年月が経っているので半鐘杭がつくられた頃のことを知っている人は少なくなっていて、なかなかはっきりとした情報がつかめません。
岡山で「水防を意識してつくられた警鐘台」や、あるいは「水害の際に実際に活躍した警鐘台」の事例をご存じの方がいらっしゃいましたら、ぜひご教示ください。

posted by pictist at 00:39| 都市鑑賞

2024年04月17日

街角のオールド公会堂2

2022年3月に「街角のオールド公会堂」という記事を書きました。岡山市内に残る古い公会堂建築を4つ紹介したのですが、その後も鑑賞を続けているので、いくつかご紹介します。

■吉田公会堂(岡山市東区西隆寺)

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オールド公会堂の竣工年ははっきり分からないことが多いんですが、この吉田公会堂は石柱にしっかり昭和9年(1934年)と刻まれていました。

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もう片方の石柱には「寄贈 安井重三翁」と刻まれています。調べてみると岡山出身の大審院判事だそうです。この地域の出身だったんですかね。近所の方に伺ったところ、この公会堂は現役で使われているそうです。すごいですよね。築90年。

私が街角の公会堂を面白いなと思うのはこういうところで、戦前のオールドスタイル建築がなにげなく残っていて、現役で使われてたりする。そしてほとんどの場合、ある日突然、特にニュースになることもなく消えていくのです。

こういうオールド公会堂って全国にあると思うんですが、みんな似た運命をたどっているのではないでしょうか。あなたのまちのオールド公会堂(集会所)もぜひ今のうちにご鑑賞を。


■富崎集会所(岡山市東区富崎)

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竣工年不明ですが古そうですよね。赤い屋根に青い外壁。『X-メン』のミスティークを彷彿とさせます(させない)。

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■光津公会堂(岡山市東区光津)

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こちらも竣工年不明です。ご存じの方がいたら教えてください。建築スタイルから見て戦前のものであることは分かるのですが。

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裏側

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■大上公会堂(岡山市東区君津)

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『岡山県の近代化遺産』によると1928年(昭和3年)竣工とのこと。

ちなみに『岡山市今昔写真集』には昭和11〜12年に撮影された大上公会堂の写真が載っており、玄関ポーチ正面の壁に右書きで「公会堂」の文字が見えます。

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側面

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側面


■福井公民館(岡山市北区中撫川)

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幾何学的なアールデコ調のデザインに、ドイツ壁。大正末期から昭和初期のものだろうと推測できますが、これも正確な竣工年は不明です。

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よく見るとけっこう変わった建築ですよね。

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裏側


この他にもまだいくつか撮影済みの公会堂があるのですが、次回パート3でまとめたいと思います。


posted by pictist at 10:52| 都市鑑賞