2020年11月24日

岡山のオールドすべり台

上伊福西公園(岡山市北区津倉町、昭和15年/1940年開園)のコンクリートすべり台が撤去されたとの報が入ってきた。形あるものがいつかなくなってしまうのは仕方のないことだけど、コンクリート構造物ファンとしてはやはりさびしい。

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上伊福西公園にあったコンクリートすべり台

今年は春に三野公園(北区三野本町、昭和6年/1931年開園)のオールドすべり台がなくなったばかり。

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三野公園にあったコンクリートすべり台

数年前には島田東公園(北区中島田町、昭和18年/1943年開園)のオールドすべり台も撤去されている。70年〜90年間、ずっとそこにあったすべり台たちが、ここ数年で立て続けに3基なくなった。

これで岡山市にある(おそらく県内でも)昭和20年以前のオールドすべり台は、下記の4基となった(ただ、これを書いている2020年11月24日の今、現存しているかどうかは確認していません。写真は1〜4年前の撮影)。

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内田第1公園(北区清輝橋、昭和16年/1941年開園)のコンクリートすべり台


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島田西公園(北区西島田町、昭和13年/1938年開園)のコンクリートすべり台


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上伊福東公園(北区伊福町、昭和10年/1935年開園)のコンクリートすべり台


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国富公園(現・住吉町仲よし公園/中区住吉町)のコンクリートすべり台も昭和20年以前のものと考えられる。記録上では国富公園の開園は昭和24年とされているが、昭和17〜18年にはすでに公園は完成していた。また、すべり台のデザインを見てもその時代のものである可能性が高い。

※大元公園(北区東古松、昭和30年/1955年竣工)にも謎の古いコンクリートすべり台があるのだが、正体不明なのでカウントせず。

これらのコンクリートすべり台は、今後、新たにつくられることのない貴重な遊具だ。

ちなみに埼玉県の百間小学校にあるコンクリートすべり台は、国の登録有形文化財になっている。製作年は上記のすべり台とほとんど変わらない。


【参考文献】
本記事の内容は福田忍さんの労作『おかやま街歩きノオト 第20号 アートなコンクリートを愛でる〜公園編〜』を参考にしています。福田さんが時間をかけて調査された貴重な岡山の公園情報が載っています。興味を持たれた方はぜひご覧になってください。
入手方法はこちら >>おかやま街歩きノオト(雑記帳)




posted by pictist at 20:09| 都市鑑賞

2020年11月22日

岡山島屋ビルの見どころ(2_夜の顔)

岡山島屋ビル(1973年/昭和48年竣工)

このビルは夜の表情がいい。だから秋・冬・春、夕方から日没後にかけて照明がついている時間帯に鑑賞することをおすすめします(夏だとまだ明るいうちに営業終了時刻を迎えてしまうので)。

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こちらは昼の顔。

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(設計:村野藤吾)




posted by pictist at 20:19| 都市鑑賞

岡山島屋ビルの見どころ(1_階段)

岡山島屋ビル(日本生命岡山駅前ビル、1973年/昭和48年竣工)に行ったら、地上から地下2階へ到る階段も味わってみてください。地下道に通じている階段で、地階食料品フロアにも入れます。

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この左側に階段室が。

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posted by pictist at 02:55| 都市鑑賞

2020年11月17日

瑜伽山加圧ポンプ場と門田喞筒場

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1936年(昭和11年)に竣工した瑜伽山加圧ポンプ場(当時の名称は操山調整池)
『岡山市水道誌』(1965年発行)より


岡山市中区平井の丘陵地に、瑜伽山(ゆがさん)加圧ポンプ場という上水道施設がある。同地近傍に瑜伽神社という神社があるので、そこから名付けられたのだろう。ただ、この山を瑜伽山という名前で認識している人は少ないと思う。

岡山で「ゆがさん」と聞けば、岡山県倉敷市児島地域にある由加山(由加神社)を思い浮かべる人がほとんどだろう。そして由加山の由加は、正式には瑜伽と書く。つまりここの瑜伽神社は、児島の由加神社本宮の分社なのだ。

瑜伽山加圧ポンプ場は1984年(昭和59年)に竣工しているが、ここにはそれ以前から上水道施設が存在していた。以前の名前は操山調整池。

この操山調整池、「みさおやま」と読ませるのか「そうざん」と読ませるのかは確認できていないが、おそらく「そうざん」だろう。岡山市民にはお馴染みだが、単体の山としての操山は「みさおやま」、みさおやまを含む丘陵地全体としての操山は「そうざん」と言う。同施設は丘陵地の南端に位置するので、普通に考えれば「そうざん」だ。

瑜伽山加圧ポンプ場と、その前身、操山調整池の成り立ちについて調べたので以下に記したい。



操山調整池は1936年(昭和11年)に竣工した。岡山市水道局による第3期拡張工事に含まれる事業で、旭東エリア(地蔵川以東の丘陵住宅地や湊、平井方面)への配水を目的としてつくられた。その際、同施設の北西に門田喞筒場(かどたそくとうじょう/岡山市中区門田本町)もつくられた。
※喞筒=ポンプのこと

第3期拡張工事は昭和7年度から10年度の4ヶ年事業として計画されていた。しかしその途中の昭和9年、岡山市は室戸台風による大洪水に襲われ、上水道施設も甚大な被害を被る。

その結果、第3期拡張工事は当初の計画より遅れて1937年(昭和12年)に完了することになる(今後の災害に備え計画内容の変更もされたため)。

操山調整池の築造工事は花崗岩に阻まれて難航したが、予定通り1936年(昭和11年)に完成、旭東エリアへの配水が始まった。上水道の敷設は永年の念願だったため、住民の喜びはひとしおだったという。岡山市で上水道の送水が始まってから、このとき30年以上が経過していた。

1981年(昭和56年)、操山調整池に1池を増設して配水能力を増強。1984年(昭和59年)には同地に加圧ポンプ場を新設、「瑜伽山加圧ポンプ場」と命名される。同時に門田喞筒場は廃止された。そして現在に到る。

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山道を進んでいくと……

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樹木に覆われて、こんな構造物が。

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アーチの中のコンクリートブロックは新しそうだ。後から塞いだのだろう。

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右書きで「清泉洞」と書かれている。左側には縦書きで「昭和十一年」。

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その向こうにフェンスで囲まれた敷地がある。ここが「瑜伽山加圧ポンプ場」。もちろん立入禁止だ。
【追記】地元の小学校出身の知人が教えてくれたのですが、小学生の頃(80年代)、遠足でここに来てお弁当を食べていたそうです。「水源地」と呼んでいたそう。当時は入ることができたんですね。私も、敷地内にトイレが見えたので「かつては市民に開放されてたんだろうな」と思いながら見ていました。

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隙間からなんとか撮影。冒頭の『岡山市水道誌』にも載っている建屋が見えた。80年以上前のコンクリート構造物だ。

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建屋は2棟あり、こちらは大きいほう。その裏側。現在はトタンで塞がれているが、『岡山市水道誌』の写真を見ると、もとはガラス窓だったことが分かる。

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こちらは門田喞筒場。

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門柱のスクラッチタイルやアールデコ調の飾りが時代を感じさせる。

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外壁は塗り直したのかもしれない。

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前述のように、今はもう使われていない。

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かつて洋館や医院などに好んで植えられたシュロ。

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中が見てみたい。

参考文献
『岡山市水道百年史』
『岡山市水道誌』
『岡山市水道史 追録』
『岡山市水道史 追録U』





posted by pictist at 06:49| 都市鑑賞

2020年11月14日

在りし日の旧北長瀬みずほ住座(3_いろんな表情)

前々回前回に続く第3弾です。

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奧に岡山ドーム

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12号棟、14号棟

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4号棟、北面

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4号棟、南面

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3号棟、北面

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1号棟、北面

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住棟番号

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集会場

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木製引き戸

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みずほ住座の中でいちばん最後に竣工した17号棟、18号棟(昭和36年/1961年)

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この2棟だけ切妻で瓦屋根です。

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ペッ景

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階段室の入口各種

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現在は更地になっている旧北長瀬みずほ住座跡地。これを書いている現時点ではまだ利用方法は決まっていません。岡山市によると2021年度中に方針が決まるとのことです。




posted by pictist at 09:05| 都市鑑賞

2020年11月13日

在りし日の旧北長瀬みずほ住座(2_増築の魅力)

前回の続きです。

解体が完了した旧北長瀬みずほ住座。印象的だったのは随所に見られる増築スケープでした。私は「増築萌え」で、異なる要素が合わさったものを見るとグッとくる体質なのです。様式が異なるもの、材質が異なるもの、時代が異なるものなどが合体している様子に、わけもなく惹かれてしまう。

この感覚は正確に言うと増築萌えではなくキメラ萌えなのですが、ひとまずその話は措いておきます(だから洋館付き和風住宅にもグッとくる)。

団地そのものの魅力とはまた別の方向になりますが、そうした視点で見たとき、みずほ住座には見どころがいくつもありました。まずは「増築風呂」。後からベランダにお風呂場を増築してるんですが、この造作が一戸一戸、少しずつ違ってるのも見ごたえがありました。

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屋上まで伸びている配管はボイラーのものでしょうね。

そしてこちらはテラスハウス棟の増築。1階部分にちょっとしたおうちを建築しているお宅がいくつかありました。

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実は去年、知人の橋渡しでみずほ住座の町内会長さんにお願いして空いてる部屋の中を見学させてもらえるかも・・・という話があったのですが、残念ながら良いタイミングがなく、そのまま流れてしまいました。増築部を中から見てみたかったなあ。団地の生活史の、貴重な記録になったはず。





posted by pictist at 21:31| 都市鑑賞

2020年11月11日

在りし日の旧北長瀬みずほ住座(1_NSペア)

岡山市営団地、北長瀬みずほ住座(岡山市北区野田)の旧住棟の解体が完了したそうです。住民のみなさんは近くの新住棟に移って新しい生活を始めておられることと思います。

以前撮影した写真の中から、全18棟のうち、いちばん最初につくられた2棟、2号棟と3号棟(昭和29年/1954年竣工)を掲載します(※1号棟のほうが後からできたのです。後述します)

この2号棟と3号棟は、入口(階段室)が向かい合っている「NSペア」という形式で配置されていました。通常、団地の階段室は北側に設けられますが、NSペアではN(北)の棟の階段室を南面につくることで、2棟の住人同士が顔を合わせる機会を増やし、コミュ二ティの活性化につなげようという意図があったそうです。

しかしこの試みは芳しい成果が見られず、NSペアは1970年代以降の団地ではほとんど採用されなくなりました。岡山市内のNSペアはみずほ住座が最後だったので、これでなくなってしまいました。

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2号棟の北面。

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3号棟の南面。

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2棟のあいだには物置が。

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2号棟の階段室に時計。

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2号棟を斜め横から。

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3号棟の南面、西側上部。

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2号棟の南面。



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ちなみにこちらは1号棟(昭和30年/1955年竣工)。1号棟は当初、県営野田団地として建てられ、のちにみずほ住座に編入されました。その際にこちらが1号棟となり、1年早くできていた上記のNSペア2棟が2・3号棟になりました。



北長瀬みずほ住座にはもう一組、NSペアがありました。6・7号棟(昭和32年/1957年竣工)です。

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右が7号棟、左が6号棟。階段室が向かい合ってます。

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7号棟の南面。

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6号棟の北面。

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7号棟の南面。

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同じく7号棟の南面。

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同じく7号棟の南面。

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参考文献/『団地ブック5』(チーム4.5畳)
※北長瀬みずほ住座についてのいろいろな知識は友人のはたっちに教えてもらいました。はたっちありがとう。

他にもみずほ住座の写真を撮ってるので、また後日、記事にしたいと思います。





posted by pictist at 15:49| 都市鑑賞