
小山祐之(こやま・ゆうし/日本給水党党首UC)さんが、シカク出版より『団地の給水塔大図鑑』を上梓されました。オールカラー224ページ。僭越ながら裏帯にコメントを書かせていただいてます。こんな素敵な本に書かせてもらえて光栄です。
本書は「団地にある給水塔」だけを400基超も収録した本。著者は10年以上にわたって全国各地の団地の給水塔を撮り歩いている、筋金入りの給水塔鑑賞者です。
一瞬「筋金入りの給水塔」みたいに見えたけど、著者のことです。筋金入りというのは。とはいえ実際、給水塔にも筋金って入ってるよね。コンクリートだったら。
なんの話だっけ。とにかく祐之さんがすごいということを言いたい。すごいというか、どうかしてるわけです。掲載しているのは400基超だけど、実際には660基の給水塔を訪れている。そして掲載されている写真を見てもらうと分かりますが、すべて青空をバックに撮影している。晴天を狙って撮ってるわけです。「曇り空だと給水塔が寂しそうに見えるから」と。ベッヒャーは曇天だが小山祐之は晴天なのである。
これ、近所ならいいよ。何度でも通えるし。でも泊まりがけで遠方の給水塔を撮りに行って、曇り空だったらどうする。雨模様だったらどうする。さあどうする。
祐之さんは出直すわけです。次の機会を待って、もう一度出かけるわけです。会社勤めをしながら。土日を使って。気が遠くなりませんか。
たとえば沖縄の給水塔には計3回行ったそうです(祐之さんは大阪在住)。観光旅行に3回行ったんじゃないですよ。「沖縄県営古謝団地」の給水塔を撮るためだけに3回行ったのです。1回目と2回目は曇ってしまったのだ。気が遠くなりませんか。
さらに。単に晴れていればいいというわけではなく、その給水塔を撮影したい方向に向いて、順光であることが条件。逆光で晴れていても意味がないわけです。だから撮影可能な時間帯が限られている。気が遠くなりませんか。
そんな鑑賞&撮影行脚の集大成が、この『団地の給水塔大図鑑』なのです。ザ・偉業。ジ・偉業か。
本書では給水塔の形状をボックス型、とっくり型、円盤型、やぐら型など12タイプに分類し、それぞれに解説を付しています。登れる給水塔、くぐれる給水塔、すべり台付きの給水塔、イルミネーション給水塔など、珍しい給水塔の紹介もあり。
こんなにたくさんの給水塔を、私たちは今日から、部屋にいながら鑑賞することができるのです。煎れたてのおいしい珈琲をいただきながら鑑賞することができるのです。ありがとうありがとう(藤岡弘、風に)。
もちろん実物を見に行くためのガイドブックとしても機能する本です。掲載しているすべての給水塔の(団地の)所在地を記載。これうっかり当たり前に受け止めてしまいそうになるけど、すごいよ。こんなデータベース今までなかったわけで。
団地の給水塔は現在では使われていないものが多く、年々減り続けています。本書に載っている給水塔にも、すでに解体されているものが多くあります(各給水塔が現存しているかどうかも記載されています。※2018年10月現在)。みんな今のうちに生鑑賞しておこう。
給水塔ファンにとっては本意ではないだろうけど、本書は、月日の経過と共にどんどん貴重になっていくはず。そして未来の誰かがある日、本書を見つけてこう言うでしょう。「よくぞ写真に撮っておいてくれた、ありがとう」と。
『団地の給水塔大図鑑』
小山祐之(日本給水党党首UC)
定価 2500円+税
224ページ・オールカラー
シカク出版
2018年10月6日初版
ISBN978-4-909004-75-8
通販ページ
http://shikaku.ocnk.net/product/1986
posted by pictist at 03:21|
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