2023年09月21日

三勲小学校のコンクリート球

岡山市立三勲(さんくん)小学校の塀に、直径50cmほどのコンクリート球が乗っている。国道250号線(旧国道2号線)沿いにあるので、岡山在住者なら見たことのある人も多いだろう。

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よき存在感。

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かなり年季が入っている。

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なぜ、ここに球が。

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球はこの一ヶ所だけで、他には見あたらない。

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コンクリート球の下に縦溝がある。実はこの溝、水害対策用につくられたもの。河川が氾濫したとき、ここに堰板を差し込んで水を食い止めるのだ。このコンクリート球は、緊急時に溝の位置がすぐに分かるように設置されたものらしい。

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これは国道をはさんだ向かい側に設置されている縦溝。こちら側にはコンクリート球はない。

このコンクリート球と塀は1938年(昭和13年)につくられたものと推測できる。なぜならその年に国道が新設されたからだ。この新国道は当時、三勲小学校の校地を貫くかたちで敷かれた。それに伴って三勲小学校は校地を大幅に改修した。だから国道沿いのこのコンクリート塀も同年につくられたと考えられる。

「国道を横断する堰板対策」は、今の感覚からすればずいぶん大袈裟に思えるが、当時の人々がこれを設置した気持ちはよく分かる。

1934年(昭和9年)。岡山市中心部は室戸台風によって甚大な被害を受けた。広範囲が浸水し、ここ三勲小学校の周辺も1メートル以上浸水したらしい。ほんの4年前にそんな経験をしているのだ。

このコンクリート球は、いわば岡山の水害の記憶だ。室戸台風に限らず、岡山は昔から水害に悩まされ、戦ってきた。その歴史を象徴する一種のモニュメントとして、このコンクリート球を捉えなおしたい。


【おまけ】
コンクリート球の北、国道が御成川(おなりがわ)を渡る位置に三勲橋という橋がある。裏付けとなる資料は見つかっていないが、おそらく三勲橋も国道造成・校地改修の年(1938年)に竣工したものだろう。前述のように、この国道は校地を貫くかたちで新設されたので、それ以前にはここに橋は存在していなかった。ただし、竣工当時から三勲橋と呼ばれていたかどうかは不明だ。

この橋もたいへん見ごたえがある。コンクリート球と併せて鑑賞してほしい。

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ちなみに三勲小学校は今年(2023年)、創立100周年を迎えます。

【参考文献】
『岡山市立三勲小学校創立七十周年記念誌』




posted by pictist at 06:09| 都市鑑賞

2023年08月30日

岡山ロスト散歩

岡山市内で撮影した写真の中から、現存しない建物・商店などを掲載します。ほとんどの物件は建物そのものが消滅していますが、中には姿を変えて建物が残っているものも一部あります。
※すべて2000年代以降に撮影したものです。

■ひろい日進堂(岡山市北区春日町)

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■下之町食料品店(岡山市北区表町)

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■まちかど美術館サンホセ(岡山市北区駅元町)

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■小野酒店(岡山市北区駅前町)

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■池田動物園のキリンの塔(岡山市北区京山)

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■池田動物園のゲームコーナー(岡山市北区京山)

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■京山ロープウェー駅舎跡(岡山市北区京山)

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■京山ロープウェーのりば跡(岡山市北区京山)

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■MIYOSHINO/カフェ・ド・パリ(岡山市北区駅前町)

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■みよしの(岡山市北区駅前町)

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※三好野本店さんは営業を続けています。


■常磐木(岡山市北区磨屋町)

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■岡山日活(岡山市北区表町)

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※建物は残っています(2023年8月現在)


■きしもと洋装店(岡山市北区/新西大寺町商店街)

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■スターダスト(岡山市北区駅前町)

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■琴(岡山市北区表町)

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■ミロール(岡山市北区表町)

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■六車理容館(岡山市北区田町)

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■松森無線(岡山市北区表町)

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■小西食堂(岡山市北区葵町)

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■サラリーマン食堂(岡山市北区出石町)

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■こらーる岡山(岡山市北区岩田町)

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■UJOパーツ(岡山市北区内山下)

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■ヒツジヤ糸店(岡山市北区平和町)

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■LOLO(岡山市北区表町)

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■鉢の木(岡山市北区平和町)

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※建物は現存(2023年8月現在)


■長谷川楽器 旧店舗(岡山市、新西大寺町商店街)

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■千日前商店街アーケード看板

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■吉田書店 旧店舗(岡山市北区表町)

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■タマヤ宝石店(岡山市北区本町)

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■神話(岡山市北区磨屋町)

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■春(岡山市北区磨屋町)

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■東京(岡山市北区田町)

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■チケットセンター岡山駅前店

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■木本歯科医院(岡山市中区門田屋敷本町)

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■昭和初期築の民家(岡山市北区出石町)

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■清輝湯(岡山市北区清輝橋)

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■旧東古松町内会公会堂(岡山市北区東古松)

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■長屋門跡と旧「安田火災」社章※保険加入印(岡山市北区番町)

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火消しが使う「鳶口」が描かれた安田火災(元東京火災、現損保ジャパン)の社章で、保険加入者の家にこのマークをつけた。火災が発生すると東京火災の消防部が駆けつけ、鳶口マークが付いている家を守るという仕組みがあった。民間の消防隊として唯一消防庁に認められていた。


■量水室(岡山市北区北方)
※昭和初期か

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■NTTコミュニケーションズ岡山中山下ビル(旧岡山市外電話センター)の通信鉄塔

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■高橋商店(岡山市北区平和町)

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■岡山市北区駅元町の木造モルタル住宅
※向かって左が桑八地下道の入口

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■藤原石油(岡山市北区岩田町)

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■GBC大供ビル(岡山市北区柳町)

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■松本アパート(岡山市北区東古松)

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■寿市場(岡山市北区柳町)
※建物は現存/改装済

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■北川製あん所(岡山市北区清輝橋)

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■千日モータープール(岡山市北区表町)

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■メルパルク岡山(岡山市北区桑田町)

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※本記事のタイトル「岡山ロスト散歩」は、ポルカ社さんのZINE『福岡ロスト観光』から拝借しました。

【あわせて読みたい】
・奉還町ロスト散歩
・「気になる家」シリーズ
・「気になる家」シリーズ(2)
・2021年に消滅した建物(岡山市)
・2022年に消滅した建物(岡山市)
・在りし日の旧北長瀬みずほ住座(1_NSペア)
・さよなら「文化人の靴 創美」
・さよなら竹中工務店岡山営業所ビル
・さよなら高島給水塔
・さよなら大正建築






posted by pictist at 00:42| 都市鑑賞

2023年08月27日

さよならcommon cafe

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大阪のcommon cafeさんが今月(2023年8月)で閉店されるそうです。common cafeは私が初めてトークイベントに登壇した場所。ちょっとさびしいニュースですが、場所は発展的に次の施設へと継承されるそうです。

2004年に吉永健一さんのお誘いで、大山顕さんたちと「団地・ダンメン・ピクトさん」というイベントをおこないました。当時は一般の人がこうした形式のトークイベントをおこなうのは珍しく、先駆的な試みだったと思います(東京カルチャーカルチャーのオープンは2007年)。

私は長年「見たことあるのに、見えてなかった」を自分の活動テーマとして掲げ、プロフィールにも記載していますが、この言葉は「団地・ダンメン・ピクトさん」のときに考えたものなのです。イベントのフライヤーを私がつくったので、その流れで考案しました。以来19年間、使い続けています。

19年前が昨日のことのようです。

posted by pictist at 22:43| あれこれ

2023年08月13日

日本ピクトさん学会設立20周年記念ピクトさんフェア

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現在、岡山県立美術館ミュージアムショップに
ピクトさんグッズの特設コーナーができています。
同ショップでは、もう10年以上
ピクトさんグッズを販売してもらってるんですが、
今年は日本ピクトさん学会設立20周年記念ということで
特に盛り上げてくださっています。

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そして来月はピクトさんの日(9月10日)ですね。
20年間を振り返るトークイベントやりたいな・・・
(思ってるだけ)



ピクトさんTシャツの受注生産に
たくさんのご注文をいただきまして、
ありがとうございました。
全25色・60着のピクトさんTシャツが
全国に旅立っていきました。

いちばん多かったのはブラックとグリーンでした。
みごとに色がばらけたので、
1色あたり2〜3着の生産になってます。
どのカラーもかなりのレア度ですよ。

タグ:ピクトさん
posted by pictist at 13:48| ピクトさん

2023年08月09日

持ち送りコレクション

持ち送り(金属製のものは「持ち送り金物」とも言う)も見かけたら撮ってるんですが、だいぶ溜まってきたので掲載しておきます。

まずこちらはもっともよく見かけるタイプ。旭型と呼ばれています。

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集めているうちにだんだん分かってくるんですが、よく見ると同じ旭型でもデザインが少しずつ異なっていて、いろんな種類があるんですよ。下記の9点はすべてデザインが違うんですが、分かりますかね(右下のだけ長短の設置向きが違いますが、向きは関係なく、デザインが異なります)。

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上段の3つと、下段の左と中の2つは特に違いが分かりにくいかもしれません。以下に一枚ずつ掲載しますので、拡大しながら見比べてみてください。

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その他の種を以下に16点、掲載します。これらもすべてデザインが異なります。似ているものは上下に並べて載せますので、これも見比べてみてください。

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その他。以下の持ち送りは上掲と同じものを含みます。

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posted by pictist at 04:08| 都市鑑賞

2023年07月15日

続・柳川ロータリーの謎(大供ロータリー編)

以前、「柳川ロータリーの謎」という記事を書いた。岡山市の柳川交差点は、過去に一度もロータリー交差点だったことがないのに、なぜか岡山市民から「ロータリー」と呼ばれている。その謎を追ったものだ。

ざっくりまとめると、「柳川交差点はかつてロータリー化する計画があったが、計画は途中で変更された。しかしなぜか計画変更後もロータリーと呼ばれ続けることになった」という内容だ。

また、柳川交差点だけでなく市内6ヶ所の交差点(柳川、大供、大雲寺、清輝橋、十日市、門田屋敷)がロータリー化される予定だったが、同じく計画は変更され、すべて信号式の交差点になったという経緯も書いた。大供(だいく)交差点や大雲寺交差点も、なぜか「大供ロータリー」「大雲寺ロータリー」と呼ばれている。

その後の調べで驚きの事実が判明した。

その6ヶ所の交差点のうち、大供交差点は、かつて実際にロータリー交差点だった時期があるのだ。このことは完全に忘れ去られている。


大供交差点(岡山市北区)

下記は1951年(昭和26年)発行の『山陽年鑑 昭和27年版』に掲載された企業広告。所在地の記載を見てほしい。カッコの中に「大供ロータリー」と書かれている。

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戦災復興計画に基づいて大供交差点が整備されたのは1958年(昭和33年)のことだ。他の交差点と同様に大供交差点もロータリー化される「計画」だったが、変更されている。

交差点の整備工事が始まるはるか以前の1951年(昭和26年)の広告で、場所をナビゲートするための手がかりとして「大供ロータリー」と表記されているのは、いったいどういうことだろう。

答えは一つしかない。大供交差点は、「整備される前はロータリー交差点だった」からだ。

前記の「市内6ヶ所の交差点がロータリー化される予定だった」という内容とは、実は矛盾していない。大供交差点だけは、「ロータリーからロータリーへ」整備される予定だったのだ。

もう一つ例を挙げよう。下記は宰府俤さんという方が1955年(昭和30年)に『岡山畜産便り』という業界紙に寄せた文章の一節だ。

「拙宅は、岡山、倉敷間の国道沿いで大供のロータリーを去ること西方約4kmの処にあるが、この間の国道沿線は、1、2年前までは備前平野の一角をなす美田の連続であった。」

やはり「大供のロータリー」と綴っている。

本当にロータリー交差点だったのだろうか。また、いつロータリー交差点になったのだろうか。

ここに、昔の大供交差点の航空写真がある。これは岡山大空襲の直前、1945年(昭和20年)5月に米軍が撮影したものだ。

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岡山シティミュージアム「第46回 岡山戦災の記録と写真展」展示写真よりトリミング
※クリック(タップ)で拡大できます。

中央島がはっきりと写っている。なんと戦中からすでにロータリーだったのだ。残念ながらロータリー化されたのがいつのことなのかは分からなかった。ただ、日本で最初にロータリー交差点ができたのは1934年(昭和9年)なので(和田倉門ロータリー交差点)、それ以降であることは確かだ。

大供交差点も空襲の被災範囲に入っているが、戦後もそのままロータリー交差点として運用され続けたのだろう。

この新たな発見を踏まえると、「柳川ロータリーの謎」が、以前より少しクリアになってくる。岡山市中心部には終戦前からロータリー交差点が存在していた。戦災復興計画で交差点が整備される前から、岡山市民はロータリーという言葉を使っていた。だから新しく整備され始めた「ロータリー化される予定の」交差点を躊躇なくロータリーと呼んだのだろう。

もちろん、結局はロータリーにならなかったのだから、ロータリーと呼んでいるのはおかしい。しかし以前に比べれば、だいぶ分かり合えそうだ。少なくとも大供交差点を大供ロータリーと呼んでいることについては、いちおう納得できる。

また、大供交差点のそばに「ロータリー」という名前の老舗喫茶店があるのは、ここが実際にロータリー交差点だったからなのだ。

航空写真以外では、大供交差点がロータリーだった頃の写真を見たことがない。1958年(昭和33年)の整備「前」の写真がどこかにあれば、ぜひ見てみたいものだ。

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整備「後」の大供交差点/『岡山市勢要覧 1963年版』


【参考文献】
『岡山市勢要覧 1963年版』(岡山市、1963年)
『山陽年鑑 昭和27年版』(山陽新聞社、1951年)
『岡山畜産便り 昭和30年11月・12月合併号』(岡山県畜産協会、1955年)
岡山シティミュージアム「第46回 岡山戦災の記録と写真展 証言からたどる戦争と空襲」展示写真
「岡山市内ロータリーにおける交通処理について」(1959年、『第5回 日本道路会議論文集』所収/太田龍亀、松原尚武、坂手康人)
「岡山市街地のロータリー交差点に由来する円形状空間の独自性とその活用に関する研究」(土木学会『土木史研究 講演集Vol.25』所収/北村尚子、樋口輝久、馬場俊介、2005年)





posted by pictist at 11:57| 都市鑑賞

2023年07月04日

写真展示『塀を越えて・2』

写真家の広瀬勉さんが経営する高円寺のバー鳥渡(ちょっと)で開催中の写真展示『塀を越えて・2』に参加しています。前回『塀を越えて』に続いて2度目の参加になります。

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私は「ペットボトルのない風景」という作品を提出しました。「ある風景」ではなく「ない風景」です。

2023年7月23日まで。

posted by pictist at 15:52| あれこれ